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「また同じ電話か」と思ったら――遠方に住む親のスマホサポート、共倒れしないための仕組みづくり

日曜の夜9時、実家の母から電話。「テレビにWi-Fiのマークは出てるのに、YouTubeが見られない」。前回も、その前も、似たような内容だった気がする。電話越しに「画面の左上、四角いアイコンじゃなくて、歯車の形のやつ」とやり取りを重ねること30分。ようやく直った頃には、こちらはもうくたくたで、翌日の仕事のことを考える気力も残っていなかった。そして一週間後、また同じ電話がかかってくる。遠方に住みながら親のスマホやパソコンの面倒を見ている方なら、似たような夜を何度も過ごしているのではないでしょうか。

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「また同じ電話か」と思う自分を、責めなくていい

正直に言うと、着信画面に実家の名前が出た瞬間、「今日は無理かも」と思ったことが何度もあります。それでも出ないと「何かあったのでは」と余計に気になってしまい、結局は出る。この「出ないと不安、出れば長時間拘束される」という板挟みこそが、遠方サポートを地味に消耗させる正体なのだと思います。しかも内容は、Wi-Fiの再接続だったり、LINEの通知の消し方だったり、先月教えたのとほぼ同じ。教えたことが定着していないことに苛立つよりも先に、「また一からか」という徒労感の方が先に立ってしまう。これは親を大切に思っていないからではなく、電話一本に感情と時間を持っていかれることに、単純に疲れているだけなのだと思います。まずはその疲れを、自分を責める理由にしないことが最初の一歩ではないでしょうか。

電話越しの「教える」には、そもそも限界がある

同居していれば、横に座って画面を指させば済む話です。でも電話だと、こちらには何も見えません。「その、右下にある丸いやつ」「え、丸いのが二つあるけど」というやり取りだけで、簡単な設定変更にも15分、20分とかかってしまいます。おまけに「アイコン」「アプリ」「アップデート」といった言葉自体が伝わらないことも珍しくなく、説明のための説明が必要になる。一度は直せても、次に同じ画面を見たときには手順を覚えていない、というのもよくある話です。これは親の物覚えが悪いからではなく、そもそも「言葉だけで画面操作を伝える」という方法自体に、無理があるのだと思います。何度説明しても定着しないと感じたときは、教え方を工夫する前に、教え方そのものを変える時期なのかもしれません。

「教える」をやめて、「代わりにできる仕組み」に切り替える

ある時期から、電話口で手順を説明するのをやめて、代わりに「こちらで直せる仕組み」を作ることに切り替えました。具体的には、AppleやGoogleのファミリー共有を設定して、アプリのインストールやパスワードの再設定をこちら側からできるようにしたこと、LINEのビデオ通話で親のスマホ画面を映してもらい、口頭ではなく実際に見ながら操作を確認できるようにしたこと、そして「困ったときに開くノート」として、よく使う操作をスクリーンショット付きで紙にまとめ、電話機の横に置いてもらったことです。全部を完璧に理解してもらう必要はなく、「わからなくなったらこのノートを見る」「見てもわからなければこの番号に電話する」という導線さえあれば、毎回一から説明し直す必要がなくなります。実家の片付けでも、こちらが「捨てる」と決めつけるのではなく「一緒に選ぶ」姿勢に変えたことでうまくいったという話を親を怒らせない実家の片付け方——「捨てる」ではなく「一緒に選ぶ」で伝える会話術という記事に書きましたが、デジタルの面倒でも根っこは同じで、「教え込む」より「一緒に扱える仕組みを作る」方が、結果的にお互いの負担が軽くなるように感じています。

全部を自分で背負おうとしない、という線引き

仕組みを作ってからも、正直、対応しきれない場面は残ります。そんなときに頼れる先を、自分の中に一つでも持っておくことは大切だと思います。地域包括支援センターでは高齢者向けの生活相談の一環としてデジタル機器の相談に乗ってもらえる場合がありますし、携帯電話ショップの多くが高齢者向けの操作教室や相談窓口を用意しているところもあり、民間でも訪問型のデジタルサポートサービスが増えてきました。こうした窓口の存在や使い勝手は地域差が大きいので、断定はできませんが、「困ったら全部自分が電話口で対応する」以外の選択肢があると知っているだけでも、気持ちの余裕は変わってきます。免許の話を切り出せずにいたときも、家族だけで抱え込まず専門家に相談する道があると気づけたことが救いになったと親に「免許返納」を切り出せない日、遠方に住む子どもができることという記事に書きましたが、デジタル面での「共倒れ」を防ぐためにも、同じように外部の手を借りる線引きを、あらかじめ自分の中に用意しておきたいところです。

実はこれも、「実家じまい」の一部だったと気づいた話

ここまでは、今この瞬間の疲れをどう減らすかという話でした。でも仕組みを整えていくうちに、ふと気づいたことがあります。親のアカウントやパスワードを把握し、家族で共有できる状態にしておくという作業は、そのまま「デジタル終活」の準備そのものだったということです。もし将来、親が入院したり、判断が難しくなったりしたときに、ネット銀行やサブスクの解約手続きをどこから手をつけていいか分からず途方に暮れる、という話はよく聞きます。逆に言えば、今スマホのサポートのために整理しているログイン情報や使用中のサービス一覧は、将来の実家じまいや相続の場面で、家族の負担を大きく減らしてくれる備えにもなります。デジタル遺品がどういうものか、なぜ整理が必要なのかについてはデジタル遺品とは?基礎知識と整理が必要な理由に、実際にどう進めればいいかの手順はデジタル遺品整理の生前準備|4ステップで進める実践ガイドにまとめてあるので、日々のサポートのついでに、少しずつ目を通しておくのもおすすめです。今日の面倒を減らす工夫が、そのまま将来の安心につながっているのだと思うと、電話越しのやり取りも、少しだけ前向きに感じられる気がします。

今夜のその電話に、少しだけ違う対応をしてみる

全部を一気に変える必要はありません。次に実家から電話がかかってきたら、いつも通り説明しながら、「今度これ、ビデオ通話でも見せてね」と一言添えてみる。それだけでも、次の電話は少し楽になるはずです。私自身、まだファミリー共有の設定もノートも完璧ではなく、時々「あれ、前に教えたのに」と思う場面もあります。それでも、電話口で一からすべてを説明していた頃に比べれば、確実に気持ちは軽くなりました。遠くに住んでいても、親のデジタル面倒を丸ごと肩代わりする必要はなく、疲れない仕組みを少しずつ作っていけばいい。今夜の電話が、その最初の一歩になるかもしれません。

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この記事を書いた人

親の入院をきっかけに、何も準備していなかったために手続きで慌てた経験があります。相続や葬儀の話は元気なうちは後回しにしがちですが、いざという時に困る人を1人でも減らしたいと思い、実体験をもとに発信しています。

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